保証人? 連帯保証? それとも連帯債務?
最近またまたかもしれませんが、経営者から法律がらみの相談を受けることが多くなりました。 私は法律のプロではありませんが、コンサルタントの資格を取るときそこそこ勉強したのでそこら辺の匂いを感じ取られているのかもしれませんね(笑)
今回相談の主は業務用の3Dプリンター(数千万円)を購入しようと考えている仮にAさんとしましょう。 勿論ご本人はそんな現金はありませんので知人や銀行等にに借金をすることになったのですが、その際連帯保証人を求められたそうです。 しかし親の代から「連帯保証人にだけはなるな」等と言われていることもあり、かなり抵抗感がある、どうすればよいか? というものでした。
そこで今回は簡単に保証人や連帯保証人、更に連帯債務との違いの基本を整理しておきたいと思います。
保証人
登場人物はお金を貸す人はX銀行(債権者)、借りる人は相談者(債務者)のAさん、保証人はBさんとCさんの2名、借入金は仮に3Dプリンター代金の6000万円とする。
- X銀行は債務者Aさんが何らかの事由により支払いができなくなった場合に限りBさんとCさんに支払を請求することができる(XはB,Cへの請求権が生じる)
- このような状況になっても保証人B、Cには2つの主張する権利(債権者Xに対抗可能な抗弁権)が与えられている(一般保証人が「保証債務の補充性」と呼ばれる所以)。
①我々はあくまで保証人なので先に債務者Aに請求するするよう求める権利(「催告」の抗弁権)
②債務者Aが実はどこそこに財産が有るのでそちらを差し押さえてくれと主張して弁済を拒む、所謂「チクれる」権利(「検索」の抗弁権) - 債務者Aが支払い不能(無資力)になった場合には、B,CはAの債務を原則均等(今回は二人なので2分の1ずつ)に支払うことになる。
今回の場合、例えば3DプリンターがX銀行に差押えられ競売により3000万円で売却できた場合、B、Cは残りの3000万円を均等に分担することになる。
連帯保証人
Bさん、Cさんが連帯保証人だった場合
- X銀行は弁済期が来たら債務者Aの支払能力の有無にかかわらず、連帯保証人B、Cに債務の返済を請求することができる。
- よく勘違いされているので注意しておきたいのは、債務者Aが十分な資力があったとしても、X銀行は連帯保証人に直接債務弁済の請求をすることができるという点。当然一般保証人のような「催告」や「検索」の抗弁権はもてない。
- 連帯保証人には持ち分比率の制限もないので銀行Xは連帯保証人B,Cに6000万円の弁済を請求することができる。
例えばX銀行はBだけに6000万円を支払わせることもできる。
結局、連帯保証人は債務者と共同で返済義務を負うことになるので、例えば共働きの夫婦が住宅ローンを組む際にローン減税を受けたい時等には次の「連帯債務」が向いているといわれてますね。
連帯債務
A,B,Cが連帯債務者だった場合、
- X銀行は連帯債務者A,B,Cのそれぞれに対して借入金6000万円の債権を有する、というのが特徴だが、一人または連帯して返済する必要があるのはあくまで6000万円。
X銀行はとにかく6000万円の回収が出来さえすれば、A,B,Cの誰がどれだけ返済するかは問わない、つまり自由に設定が可能なのだ。 - 従って、例えばCさんだけが6000万円支払うことも可能だが、その場合、CはA,Bに自分が支払った代金を請求する権利(求償権)が生じる。
- ここからはちょっとややこしくなるが、連帯債務者はまさに「連帯」しているのでそれぞれに個別に発生した返済や債務免除された際には互いに影響しあうことになる。
例えば、
①Cさんの債務6000万円/3=2000万円(この考え方は連帯債務者の内部事情の話で、勿論X銀行はこれを意識しない)が何らかの事由で免除された時にはその影響がA,Bにも及ぶ。 従って両者に請求される債務は4000万円に減額されることになる(「免除」の絶対効)。
②未払いの状態が続く等の事由によりX銀行が時効をリセット(「消滅時効の中断」)したい等の事由により、Cに「請求」した時にはA,Bにもその効力が及ぶ。ちなみにCが時効を獲得(消滅時効の援用)したときにはA,Bにもその効力が及ぶ(「時効」の絶対効)。
③例えばBがX銀行に対して預託金等の債券(「反対債券」)2000万円があり、これを利用して返済(所謂「相殺」)した時にはA,Cにもその効力が及び、X銀行から見たそれぞれの債務は4000万円に減額される(相殺の絶対効)。
・・・等、民法的には色々あるようですが、ややこしくなるので(というか「私も説明しきれないので」、が正しい、笑) この辺にしておきましょう。
以上だが、実際に保証人を設定するときには遠慮なくまっとうな借入機関や役所に相談すればよいだろう。
2017年6月3日